大阪・新町の一角に建つ長瀬産業ビルは、1928年(昭和3年)に竣工した鉄筋コンクリート造り4階建てのレトロビルである。完成からまもなく100年を迎えようとするこの建物は、戦前期の都市建築の気配を今に伝える貴重な存在だ。設計したのは、初代通天閣を手がけたことで知られる建築家・設楽貞雄。近代大阪の発展期における商業建築の一例として、機能性と意匠性のバランスに優れた設計がなされている。


外観は、全体として左右対称の整ったファサードを基調としつつ、意匠の重点を玄関まわりに集約している。三階にまで達するアーチ状の縦長窓がモダンな印象を与え、石造の門構えや全面に装飾を施した背の高い扉が重厚さを強調する。


さらに、その上部に設けられたバルコニーが、建物全体にリズムと変化をもたらすアクセントとなっている。垂直線を強調した構成や、開口部のリズミカルな配置が、都市の中での存在感を静かに主張する。細部には時代特有の意匠が随所に見られ、昭和初期の建築美を感じさせる。

長瀬産業ビルは、単なる保存建築にとどまらず、現在もオフィスビルとして使われ続けている。その価値が認められ、「生きた建築ミュージアム・大阪セレクション」にも選定。歴史と実用性が共存する、都市の時間を体現したこの建造物をその目で確かめてほしい。※2026年4月時点の情報です。(かの)
- 住所:大阪市西区新町1-1-17
- アクセス:OsakaMetro・四つ橋線「四ツ橋」駅から徒歩約5分
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