大阪・天神橋エリアに建つフジハラビルは、大正から昭和初期の都市型建築の姿を今に伝えるレトロビル。実務建築としての完成度の高さと、街並みに溶け込む落ち着いた存在感が魅力の一棟だ。


竣工は1923(大正12)年とされ、当時の大阪が商業都市として成熟していく過程で建てられた貸事務所ビルである。北浜周辺には同時期の近代建築が多く残るが、本建物もそうした流れのなかで生まれ、戦後の建て替えの波を乗り越えて現在まで使い続けられてきた。2009年から2010年にかけては、NHK連続テレビ小説「ウェルかめ」のロケ地としても使用された。


外観は、スクラッチタイル貼りを基調とした端正なファサードが特徴である。壁の彫刻とアーチ型窓を囲む縦窓が特徴的で、柱型のリズムや開口部まわりの納まりに設計の丁寧さが表れており、近づくほど味わいが深まる。内部も、戦前の事務所ビルらしい実用本位のつくりが基本だが、階段や共用部の一部には創建当時のディテールが残る。アートギャラリーとして使われ続けてきた“時間の厚み”を感じさせる点が魅力だ。


フジハラビルは、派手なランドマークではない。しかし、日常のビジネスを支えてきた実務建築としての美しさがしっかりと息づいている。街歩きのなかでふと目に留まる、静かな魅力を持つレトロビルなのである。※2026年1月時点の情報です。(かの)
- 住所:大阪市北区天神橋1-10-4
- アクセス:OsakaMetro堺筋線・谷町線「南森町」駅より徒歩約5分
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