職種の垣根を越えて、先祖代々同じ商売を守り継ぐ「大阪老舗」

㐂太八 明治の建屋で味わう、歴史と人情の天ぷら

00:00
00:00
※再生ボタンを押すと、ナレーションが再生されます。

職種の垣根を越えて、先祖代々同じ商売を守り継ぐ「大阪老舗」

㐂太八 明治の建屋で味わう、歴史と人情の天ぷら

00:00
00:00
※再生ボタンを押すと、ナレーションが再生されます。

オフィス街に突如として現れる重厚な門構え。一歩足を踏み入れれば、そこには時間が止まったかのような空間がある。老舗天ぷら割烹「㐂太八(きたはち)」は、明治40年に旅館として建てられた歴史ある建屋に暖簾を掲げ、5つの時代を静かに見守り続けてきた。2階の屋根や化粧室の天井に残る意匠には、100年以上前の職人の息遣いが感じられ、この場所が単なる食事処ではなく、街の歴史そのものであることを物語っている。
その物語は、昭和4年、賑やかな法善寺界隈での創業から始まった。往年の名優・山村聰をはじめ、多くの役者たちに愛された味は、戦火を逃れた島根での再起を経て、戦後、現在の明治の建屋で新たな光を灯すことになる。

「㐂太八」の天ぷらは、ごま油の香ばしさと関西風のさっぱり感を併せ持つ、絶妙な中間の味わいである。また、そのメニューの裏には、大阪の文化と人情が息づいている。高価な海老の代わりという冗談めかした理由から生まれた紅生姜の天ぷらは、大阪人の粋な倹約精神を体現する一品。また、常連客との交流から生まれた「卵かけご飯」が締めの定番となるなど、おおらかで温かい人情味がこの店のもう一つの魅力である。

コースには天ぷらのほか、お造り、焼き物なども。

かつては北浜のビジネスマンが「株が揚がる」と縁起を担いで賑わい、今は遠方からの観光客や家族連れが集う。時代が移り変わっても、代々受け継がれる天ぷらの味と、お客様を大切にする「おもてなしの心」は変わらない。明治の面影を残す空間で、大阪の歴史と人情が詰まった天ぷらを味わうことは、この街の食文化に触れる、かけがえのない体験となるであろう。※これは2025年10月現在の情報です。(M. M)

住所:大阪市中央区今橋2-2-10
アクセス:大阪メトロ御堂筋線淀屋橋駅から徒歩約5分、大阪メトロ堺筋線・京阪本線北浜駅から徒歩約3分
https://www.kitahati.jp/

MAPを見る

投稿されたコメント
投稿フォーム

CAPTCHA


ノスタルジック探訪を見る