中崎町をぶらぶら歩いてるとき、ふと視界に入ってきたのが、どこか懐かしいフォントで「喫茶いちご」と書かれた電飾の置き看板。今ではほとんど見かけないような、昭和の香りただようレトロな看板やった。「うわ〜、懐かしいなあ」と思わずつぶやいた次の瞬間には、もう気づけば店の中に足を踏み入れていた。それくらい、自然に、引き寄せられるような店構えやったんよ。扉を開けて中に入ると、そこはまるで時間が止まったみたいな空間。引退したマダムたちと、今を生きる若者たちが同じ空間で過ごしている、不思議な混ざり方。そのミスマッチさが妙に心地よくて、なんやホッとする。レトロな茶色のソファーと、擦り切れた背表紙の漫画、タバコの匂い、そう、ここは今では珍しい“全席喫煙OK”の純喫茶。店主のおばちゃんは優しくて話しやすい雰囲気の方で、席に座るとすぐに「灰皿いる?」って声をかけてくれた。分煙なんて概念はなくてちょっと煙たいけど、なんや懐かしい、昭和の喫茶店そのままの空気やった。メニューをみると、店名と同じ「いちごジュース」の文字を発見。「これは頼まなあかんやろ」と思って注文してみたら、奥からミキサーの音が聞こえてきて、生のいちごを使ってその場で作ってくれたんよ。しかも、なぜかバナナがちょこんと添えられていて、「これおまけ〜」って笑うおばちゃん。こういうちょっとした気まぐれがまた、地元の喫茶店らしくてええなあと思った。しばらくして、私が座っているテーブルに「ごめんね〜」って、もう一人お客さんが案内されてきた。いわゆる相席やねんけど、不思議と全然イヤな感じせんかった。お互い干渉せず、でも気まずくもなく、ちょうどええ距離感で空間をシェアできたのは、このお店の空気が作っているんやと思う。店を出るとき、おばちゃんが「またすぐ来てな〜」って声をかけてくれた。その一言がすっと胸に残って、「あ、また来よう」って素直に思えたんよね。店を出た瞬間、「あ、いまって令和やったな」とハッと現実に戻る。そんな感覚になるくらい、店の中はまるで時間が止まっていたような、あったかい空間やった。ぜひ、昭和にタイムスリップできる喫茶店に行ってほしい。(ne)
- 住所:大阪市北区中崎西1-8
- アクセス:OsakaMetro谷町線「中崎町」駅から徒歩約4分