美と技を愛でるレトロ建築

日本基督教団島之内教会 モダニズム建築の簡潔な造形と重厚な雰囲気が共存、明治時代に設立、登録有形文化財。

美と技を愛でるレトロ建築

日本基督教団島之内教会 モダニズム建築の簡潔な造形と重厚な雰囲気が共存、明治時代に設立、登録有形文化財。

日本基督(キリスト)教団島之内教会は明治時代の1882年に設立された。礼拝堂の構造は1929年築、鉄筋コンクリートブロック造、地上三階建ての陸屋根である。2009年には国の登録有形文化財に指定され、近代建築史における価値が広く認められている。島之内教会の歴史は、大阪市中心部におけるキリスト教布教活動の拠点形成と深く関わっている。繁華街の一角にありながら、信徒の礼拝と地域社会への奉仕を担う場として建設された。礼拝堂はブロックを積み上げた外観を保ちながら、鉄筋コンクリートの強度を兼ね備える技術的工夫がなされている。この構法は日本の近代建築技術の発展過程を示す貴重な事例とされ、保存の意義は大きい。

外観は、正面に大階段を配し、その上に六本の角柱を並べた堂々たる構成をもつ。正面性を強調するデザインは宗教建築としての象徴性を高めており、外壁には化粧ブロックが用いられ、1920年代から30年代のモダニズム建築の簡潔な造形と重厚な雰囲気が共存している。内部は長椅子を備えた典型的なプロテスタント礼拝堂であり、説教壇を中心にシンプルで明快な構成をとる。さらにパイプオルガンを所有しており、礼拝のみならず音楽会などでも用いられている。

1945年の大阪大空襲では大きな被害を受け、多くの部分を焼失したが、その後信徒の努力によって復旧がなされ、今日まで礼拝と活動の拠点として用いられてきた。戦災を経てもなお、竣工当初の主な外観的特徴が保たれている点も、この教会の大きな魅力である。また島之内教会の設立には、同志社の創立者である新島襄と、その妻で大河ドラマ「八重の桜」のモデルとなった八重の存在が深く関わっている。

現地を訪れると、繁華街の喧騒の中に突然現れる白い立面と列柱が強い印象を与える。外観は都市景観の中で独自の存在感を放ち、内部は落ち着いた光に満ちた空間が広がり、都市の中心部において静寂と祈りの場を提供している。島之内教会は、近代建築技術の到達点を示すとともに、都市における信仰の歴史を物語る重要な建築遺産である。

日本基督教団島之内教会
住所:大阪市中央区東心斎橋1-6-7
アクセス:地下鉄 御堂筋線「心斎橋」駅心斎橋筋出口(大丸側)徒歩約7分、地下鉄堺筋線「長堀橋」駅7番出口 徒歩約3分
https://www.shimanouchi-church.org/

MAPを見る

投稿されたコメント
投稿フォーム

CAPTCHA


ノスタルジック探訪を見る