高層ビルが立ち並び、足早にビジネスパーソンが行き交う大阪・淀屋橋エリア。その一角に、時間が止まったかのような長屋が現れる。そこには1950年代から続く静謐な空間、「喫茶リスボン」が姿を現す。ここは、半世紀以上の時を刻んできた、大阪を代表する純喫茶の一つである。

喫茶リスボンの創業は1959年(昭和34年)。高度経済成長の幕開けとともに、この地で産声を上げた。店内に一歩足を踏み入れれば、そこは外界とは別世界の、深い琥珀色の空気に満たされている。強いて言えば、店内は昭和のjazzバーのような雰囲気だ。飴色に変化した木製の壁板、不揃いな角材の竿天井、そして控えめな照明。そのすべてが、かつての「サロン」としての風格を漂わせている。穏やかなクラシック音楽が流れる中、新聞を片手にコーヒーを啜る人々の姿は、創業当時から変わらぬリスボンの日常風景である。

リスボンの朝を彩るのは、シンプルながらも妥協のないモーニングサービスである。多くのファンを惹きつけてやまないのが、絶妙な厚さで焼かれたトーストに乗るハムエッグだ。外はサクッと、中は驚くほどふんわりとした食感で、あらかじめ6等分にカットされたハムエッグと、添えられたマヨネーズが食欲をそそる。これに深いコクのあるコーヒーがセットになり、至福の朝を演出する。

淀屋橋というビジネス街のど真ん中にありながら、ここには不思議と「急かされる感覚」がない。それは単にテーブルや席の広さに余裕があるという物理的な理由だけではなさそうだ。2026年現在もなお、この空間が失われずに残っていることは、大阪という街が持つ文化的な厚みの象徴と言っても過言ではない。流行に流されず、ただ誠実に一杯のコーヒーを供し続けるリスボンの姿勢は、訪れる者の心に深い安らぎを与え続けているのである。※2026年1月時点の情報です。(かの)

住所:大阪市中央区道修町3丁目2-1
アクセス:OsakaMetro淀屋橋駅から徒歩約6分

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