文芸の小阪、人情の布施 レトロがいっぱい東大阪

司馬遼太郎記念館 『坂の上の雲』や『竜馬がゆく』の名作が生まれた、生前そのまま保存された司馬の書斎

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司馬遼太郎記念館 『坂の上の雲』や『竜馬がゆく』の名作が生まれた、生前そのまま保存された司馬の書斎

司馬遼太郎記念館は、作家・司馬遼太郎の創作の原点に触れられる貴重な文学空間である。大阪府東大阪市の静かな住宅街に位置し、外観は建築家・安藤忠雄による設計で、コンクリートの簡潔な造形が司馬作品の知的で静謐な世界観を見事に表現している。館内に入ると、まず圧倒されるのが高さ11メートルにもおよぶ書架である。そこには約2万冊もの蔵書が整然と並び、司馬が歴史を掘り下げ、物語を紡いだ膨大な知の源泉が視覚的に迫ってくる。書棚を見上げるだけで、彼がどれほどの探究心と好奇心を持って日本と世界を見つめていたかが伝わってくる。

展示室では、司馬の生涯や作品に関する資料、原稿、愛用品などが丁寧に紹介されており、作家としてだけでなく一人の知識人としての姿にも触れることができる。静かに流れる時間の中で、言葉の力と歴史へのまなざしを改めて感じ取ることができる場所である。

また、記念館の大きな見どころのひとつが、生前そのままに保存された司馬の書斎である。書斎を含め自宅がそのまま残されており、西の端にある書斎だけは外から覗けるようになっている。机の上には筆記具や資料が残され、窓際の明かりの入り方まで当時のままである。ここに腰を下ろして執筆を続けた姿を思い浮かべると、まるで時間が止まったかのような感覚に包まれる。この空間こそが、『坂の上の雲』や『竜馬がゆく』といった名作が生まれた創作の現場であり、ファンにとってはまさに聖地といえる。

司馬遼太郎記念館は、「考える」ことの尊さを思い出させてくれる知の空間である。読書好きはもちろん、歴史に関心のある人にとっても、一度は訪れる価値のある場所である。(かの)

書斎から見た庭

司馬遼太郎記念館
住所:大阪府東大阪市下小阪3丁目11番18号
アクセス:近鉄奈良線「八戸ノ里駅」下車 徒歩約8分
https://www.shibazaidan.or.jp/

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