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八百源来弘堂 安土桃山の香りを今に伝える肉桂餅の物語
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八百源来弘堂 安土桃山の香りを今に伝える肉桂餅の物語
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堺の地で200余年の時を刻む老舗、八百源来弘堂。その代表銘菓である「肉桂餅」の歴史は、訪れる人々を、かつて南蛮貿易で栄華を極めた華やかな堺へと誘う。

時は安土桃山時代。「黄金のジパング」と称されたこの国際貿易都市で、香料・香木を扱う貿易商人・八百屋宗源は活躍していた。中国やルソンといった南方諸国から数百種もの香料を輸入し、日本中に流通させていた宗源。その中にあった「肉桂(ニッキ)」、すなわちシナモンは、香り高く珍重された一方で、辛味や苦味が強く、子供や婦人には受け入れられにくいという難点があった。
胃薬や風邪薬の生薬としても用いられたこの肉桂を、誰もが口にしやすいよう、宗源はつき上げた餅に混ぜることを考案。こうして生まれた、香りも味も素晴らしい餅こそが、「肉桂餅」の始まりと伝えられる。

時を経て、上方文化が花開いた元禄の太平の時代。宗源の子孫は、再び堺の地に菓子商を開く。先祖の名を継ぎ「八百源」と称した。家伝として伝わっていた肉桂餅を、初代は柔らかな求肥に肉桂を練り混ぜ、小豆のこし餡を包むという、新たな製法で世に送り出す。この新しさが評判を呼び、肉桂餅は時代と共に堺の町衆に愛される銘菓となっていった。


明治維新や太平洋戦争での堺の焦土化など、幾多の苦難を乗り越え、その伝統は現代へと受け継がれている。現在、6代目の当主を務めるのは岡田巧氏。小豆を炊く火加減や薪のくべ方など、祖父から菓子作りの真髄を受け継いだという。現在の「肉桂餅」は、ニッキの香りに癒やされる、滑らかな口あたりで上品なこしあんが特徴だ。ぜひ一度、その深遠な歴史が産んだ味わいを堪能していただきたい。
※これは2025年10月現在の情報です。(A. U)
- 八百源来弘堂本店
- 住所:堺市堺区車之町東2丁1-11
- アクセス:阪堺電軌阪堺線花田口駅から徒歩約3分、南海本線堺駅・南海高野線堺東駅から徒歩約20分
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