美とストーリーで巡る 魅惑の泉州レトロ紀行

高麗橋野村ビルディング 1927年安井武雄が設計、アール・デコ様式と東洋の美意識が見事に融合

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高麗橋野村ビルディング 1927年安井武雄が設計、アール・デコ様式と東洋の美意識が見事に融合

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高麗橋野村ビルディングは、100年近く前の1927年に大阪市、高麗橋の堺筋沿いに建てられた。このビルを設計した安井武雄は、大阪瓦斯ビルディングをはじめとする近畿地方の代表的な建築物を設計した建築家である。当時としては珍しい鉄骨鉄筋コンクリート構造が採用され、戦前は地上6階建てだったが、1964年に7階部分が増築された。

堺筋に面したこの独特な建築物は、その広い間口とは対照的に、奥行きが極めて狭い敷地という制約の中で建てられている。外壁には、1920年代に流行した東洋的なアール・デコ様式の装飾が随所に見られ、当時の国際的なデザイン潮流を色濃く反映している。特に、モルタル塗りの腰壁は薄い褐色で統一され、建物全体に落ち着いた印象を与えている。

注目すべきは、各階間の腰壁上端を外側に迫り出させた特徴的な外壁の形状である。これは、20世紀初頭のドイツ表現主義建築を牽引した建築家エーリヒ・メンデルゾーンが好んで用いた手法を取り入れたものであり、当時の日本の建築家が海外の最先端デザインを積極的に学習し、自らの作品に取り入れていたことを示している。さらに、その迫り出した縁にはオリエンタル調の繊細な装飾が施されており、アール・デコ様式と東洋の美意識が見事に融合したデザインとなっている。

実際にこの建物を現地で目にすると、そのダイナミックな量感と、約100年前に生み出されたとは思えないほど斬新なデザインに驚かされる。現代の視点から見ても色褪せることのないそのデザインは、建築史における重要な遺産であると同時に、当時の建築家たちの挑戦的な精神と卓越した美意識を今に伝える貴重な存在と言えるだろう。(かの)

高麗橋野村ビルディング
住所:大阪市中央区高麗橋2丁目1番2号
アクセス:大阪メトロ堺筋線「北浜駅」徒歩1分 、京阪本線「北浜駅」徒歩3分
http://www.nomurashokusan.co.jp/business/office_osaka/kouraibashi/

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