大阪・淡路町、ビジネス街の喧騒が交差する一角に、時代から取り残されたかのような静謐な空気を纏う建物がある。それが、株式会社清水猛商店の本社ビルである。清水猛商店ビルの竣工は、1924年(大正13年)にまで遡る。大正から昭和初期にかけて、大阪は「東洋のマンチェスター」と称されるほどの隆盛を誇った。その中心地であった船場において、このビルは商都大阪の栄華を象徴する存在として誕生した。1945年の大阪大空襲という未曾有の惨禍をも耐え抜き、戦後の高度経済成長期、そしてバブル崩壊という激動の時代を潜り抜け、今なお現役の商業ビルとして使われ続けている。

木造3階建で典型的な町家の建物であるこのビルの魅力は、派手な装飾を排した「シンプルでありながら力強い」デザインにある。外壁を覆うのは、1階ファサードの両角にレンガ積み、洋瓦風の小庇、そしてワイヤーで釣られた大庇によって重厚な風格を漂わせている。縦に長く伸びた窓と、それを強調する壁面のラインが、建物に均整のとれた美しさを与えている。アール型に仕上げられた上部にはさりげなく幾何学的な装飾が施されており、当時のモダニズムへの傾倒がうかがえる。建物東側はパーキングになっているため、側面が見える状態になっている。ただしこちらの外壁は全面的に張り替えられている。


長年にわたり街の景観を守り続けてきた功績は、専門家からも高く評価され、大阪市が「生きた建築(現在も使われ続け、大阪の魅力を高めている建築)」として認定する「生きた建築ミュージアム・大阪セレクション」に選出されている。清水猛商店のビルは、戦災を免れ、経済の荒波を越えてきた大阪商人の不屈の精神と、美意識を現代に伝える「生きた証人」なのである。※2026年1月時点の情報です。(かの)
- 住所:大阪市中央区淡路町3丁目5-6
- アクセス:OsakaMetro御堂筋線「本町」駅から徒歩約5分































