大阪市西成区に位置する南海木津川駅は、都会の一角に突如現れる平屋の駅で、その異質な存在感が際立っている。阪神高速道路がすぐ南を走り、大阪環状線からもわずか500mしか離れていない場所に、ひっそりと佇んでいる。南海高野線(汐見橋線)の駅である木津川駅は、大阪の秘境駅として知られ、一日の乗降客数は100人台と非常に少ないのが特徴。前後には500m間隔で駅が存在するため、木津川駅がなくても不自然ではない。


なぜこのような場所にあるのか。その答えは、すぐ西を流れる木津川にある。1960年頃まで、和歌山から伐採された木材が南海高野線で運ばれ、駅に隣接する入り江で船に積み替えられ、約500m下流の貯木場へ輸送されていた。現在の昭和山千島公園がその貯木場の跡地だ。駅構内には、かつての貨物輸送に使われた側線が今も残っている。本線からは切断され、使用されることはないが、かつての賑わいを偲ばせる痕跡だ。


木津川駅はかつて、木材を運ぶ貨物列車の拠点として栄えたが、産業構造の変化や交通網の発達により、その役割を終えた。周辺に住宅が少ないため、日常的に利用する乗客は限られている。貨物輸送の衰退とともに、木津川駅は乗降客数が非常に少ない「秘境駅」となった。大阪の都市開発を支えた木材流通において重要な役割を担った歴史を持つ木津川駅は、広々とした構内や残された側線が往時の繁栄を今に伝える貴重な遺構と言える。(kano)
- 木津川駅の情報
- 住所:大阪市西成区北津守一丁目8番67号
- アクセス:南海木津川駅
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