大阪・天満橋に本店を構える「永田昆布」は、明治六年(1873年)創業の老舗であり、昆布文化の真髄を今に伝える名店である。大阪商人の粋と誠実な職人仕事が息づくこの店では、選び抜かれた北海道産昆布を使い、旨味と香りを最大限に引き出す加工技術に磨きをかけ続けている。その一片に込められた職人の情熱と伝統の重みが、永田昆布の味を唯一無二のものにしている。

看板商品である「黒潮」は、北海道道南白口浜産の肉厚な天然真昆布と厳選した鹿児島産まぐろ節を使用した名物。永田昆布を代表する逸品である。厳選した真昆布を使い、秘伝の製法でじっくりと旨味を凝縮させた佃煮昆布で、口に含むと豊かな香りと深いコクが広がる。ほどよい塩味と昆布の自然な甘みの調和が見事で、白ご飯はもちろん、酒の肴やお茶漬けにも最適だ。その味わいは一度知ると忘れがたく、多くの常連客が「黒潮」だけを求めて足を運ぶというのも頷ける。

天満橋という立地もまた魅力の一つである。川風のそよぐこの界隈にあって、永田昆布の店先にはどこか温かな風情が漂う。店内には多彩な昆布商品が並び、贈答用から日常使いまで幅広く揃っている。贈り物としての格式と、家庭の味としての親しみやすさを併せ持つところに、この老舗の懐の深さがある。店先には、「八軒家船着場跡碑」が残されている。天満橋八軒家船着場は、江戸時代、京と大坂とを往来するため八軒の船宿が軒を並べる浪花名所のひとつだった。永田昆布は、大阪の食文化を支え、出汁や佃煮を通じて「日本の旨味」を伝え続ける存在である。名物「黒潮」をはじめとする逸品を味わえば、長年愛されてきた理由が自ずと理解できるだろう。(かの)

永田昆布
住所:大阪市中央区天満橋京町2-10
アクセス:京阪・地下鉄 天満橋駅からすぐ
https://www.nagatayakonbu.jp/

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